Other
建築写真を自身で撮ると決めた。マニュアル本をパラパラと早送りにして
カメラを触りながら、これが・・あれが・・と格闘する。
要はマニュアルが頭に入ってこないのだ。異国の言葉で書かれた異国の経典にしか目には映らない。
しかし何か新鮮で、なぜか楽しい。
・・・上は天神町のHAMONさんで購入した花入 断面は楕円形で白濁と黒い縁が清廉。
建築の世界に入るきっかけをくれた逸見さん。
京都で数寄屋の修行を終え帰岡し、仕事を続けていた。
大きな体で滑らかにゆっくり動く。
凪の如く決して誰にも怒ったりなどしない。
いつもうす汚れていたが、品があり諦観を漂わせていた。
規矩尺術を巧みに使いこなし、曲尺をくるくると回す。
黙々と滑らかに刻みものを組み上げる。
たまに出来たものが気に入らないと、工期や予算などお構いなしに黙々と壊す。
何も分かっていない私に、
「たとえば拳大の石があるとするじゃろう。ほんとに拳くらいの大きさなんか、
土の中の大きな石の先端なんか感じてわかる様にならんといけん」
この人ほんとに分かるんかなあと思いながら「はい」と返事をした。
「仕事」事に仕える。
自分の感覚に従って「美」を追求する真摯な姿勢を思い出し
今でもやはり憧れである。
竣工と同時によく作る木のオリジナルポスト。
材料はたも、内寸横410ミリ縦300ミリ。
普通封筒は小口の穴から投函。
大型封筒は上の蓋を上げて投函。
取り出す時は全面がOPENになる。通常はネオジム磁石で蓋は半固定するが
防犯が気になればダイアルキーも付けられ、外壁の色に合わせて木の目が消えないように塗装する。
自宅の靴箱を整理していたら20年前に娘が履いていた靴が出てきた。
ちょうど建築業界に入った頃で年齢的にはかなり遅い入門で工務店の代表からは
今からでは、ものにならないのでやめた方がいいと断られたが是が非でもと受け入れていただいた。
恥ずかしくも毎日必死で思い出してはひとり赤面する。
たくさんの方に迷惑をかけてたくさんの方に助けていただいた。
独立してからはLIVING NINEとして11年。建主の方々、関係者の方々に育てていただいた。
建築設計の方向性を再考していたところ対外的ではなく自身への誓約として慣れ親しんだ
社名を変えた。新しい名前は自身で考案したものではなく2年前に竣工した建築主がつけてくれた。
クリエイティブ・ディレクターとして長年にわたって仕事をされてきた建主がその建築の中で暮らした
実感として『手触り』という言葉を浮かび上がらせた。単に触覚だけの範疇ではなく
自身が作り手として大切にしていることが内包されているので即決した。
家ではなく建築。探求していきたいと思います。