以前工事した1次工事のタイムスケジュールを確認するため2021年のスケジュール帳を
開いたところ片隅にメモしてあった。ガンバレではなく、誰もがある谷の歩き方をやさしく示唆する。

       やめないで続けることの大切さ
       努力というと力こぶを入れて
       頑張るイメージがありますが
       時には細くなって流れが
       消えそうになる中でも
       その流れを絶対に消さない
       そして続けていく
       それが本当の努力だと思います

          松岡和子さん(翻訳家 シェイクスピア全作の新訳に取り組む)


初めての晴天   スウェーデン国立美術館へ

「ミナ ペルホネン」の展覧会が期間中であり、ちょうど皆川さんが大きなキャンバスに描いていた
以前に記事で読んだことを朧げに覚えていたが皆川さんが19歳の時に
訪れた思い出の地。勝手に感慨深く背中を拝見していた。

夕方にはデンマークに戻り翌朝、自転車で街中を脚がパンパンになるまで漕ぎ尽くした。



nomaの新店舗へも建築を見るために立ち寄った。
レネ・レゼピ率いるノーマの葛藤の日々を描いたドキュメンタリー映画を100回以上は観たと思うが
凹んではエネルギーを注入していた   ここを右に曲がればnomaがある

準備期間中と冬季ということもあり閑散としているが繁忙期を想像すると是非また訪れてみたい

森の墓地をあとにしてセントマークス教会へ歩いて移動、途中地元の人たちが集まる小さなレストランで昼食を取り
90分程でたどり着いた。


要塞 歪む煉瓦 謙虚で限りなく無口

牧師さんが出てこられ教会の冊子を手渡してくれた
教会内を案内してくださりあとは自由にしてくださいと親切にして頂いた
冊子には教会の工事写真に設計者レヴィレンツの老齢の姿があった
前屈みになり煉瓦の積み方をとても気にするように写っていた


感情が深く潜るように作用する

レヴィレンツの設計事務所に在籍していた所員の回顧録があった
「自分の仕事が終わり帰る時にはレヴィレンツは何時も机に向かい背中を向けていた
朝出社すると何時もそのままの姿だった」

聖堂の椅子に座り内部を見回している時に広島にある世界平和記念聖堂を思い起こした
晩年の村野藤吾が白髪を靡かせ小さな庭石を水の中に消えていくように見せようと
石を触っていた 靡く白髪は枯れたススキのようで・・・と綴っていた記事も忘れられない
建築はデザインではなく祈りの積み重ねなのだ

セントマークス教会をあとにしてストックホルムにある宿に向かう
船舶を改造した船上ホテル

対岸にはエストベリのストックホルム市庁舎が見える

就寝中、何度となく厚い氷が船にあたり鈍い音が響くが、それもまた心地いい

空路スウェーデン 森の墓地へ グンナル・アスプルンド/シーグルト・レヴィレンツ
広大な墓地の中、人影もなく何度か写真で見た起伏のある場所を歩く

左が聖十字礼拝堂とさらに奥に森の礼拝堂
右の直線の奥に復活の礼拝堂が、かすかに見える

森の礼拝堂の前の簡素な潜り

森の礼拝堂(アスプルンド) 土地に根付く農家や教会を感じさせる
ちょうど式が執り行われていた

長い道の奥にある復活の礼拝堂(レヴィレンツ)


春を迎える前で自然も休止状態で炭色の空から霧雨が降る

最初は聞いていた程に感銘も感動も無かったが、長い時間身体に任せ歩いていると、この広大な土地と抜けた空、深い森の風景がもうこの世にはいない故人が別世界で分かれているのではなく同じ自然の中に同居している感覚になるのではないかと感じた
過度な建築が必要な訳もなく、ただ小さな墓標の下にいるだけでもない。生きる人のための回復と対話の場所。