ある人と初対面の時に、相手方の話す方法や話す内容、身嗜みなど表面的なものが頭に入ってくる。
それは相手がどう見られたいかなど技術的なことも少なからずある。
でも中には、表面的なものと一致せず、その人の柔らかさとか厚みに感心したりすることがある。
日頃何を想って暮らしているとか、人知れず背負っているものがあるとか、
そうしたわからない「何か」発酵したものが匂い立つ。
唐突に人間を建築に置き換えてみる。
骨や皮膚、臓器やリンパ液などの機能は木組みや壁や設備、生活動線かもしれない。
機能としては存在しているが、応答として愛着は薄い。
建築に、わからない「何か」が匂い立てば住む人と相互に厚みを増していくと思う。
その、わからない「何か」を探究したい。
自分とは親子ほど離れた年齢差がある。
休憩になり何か飲む?と尋ねると「水があるので大丈夫です」とモンシロ蝶のような呟き。
育った家庭環境はさておき、時代環境の作用は身体に染みつき
価値観や行動様式の違いは当たり前。 生きる時代が入れ替われば あなたは私 私はあなたなのだ。
ただ、良いものを作ろうとする意思は変わらず、いつも助けてもらっている。
少し前、熊野信仰である熊野速玉大神と夫須美大神の木坐像が期間展示されていたので
和歌山に向かった。近距離で対面するには恐れ多いと思うほど何かを感じるので後退りしながら対面した。
熊野速玉大神がイザナギであり薬師如来、熊野夫須美大神がイザナミであり千手観音。
その子供、家都美御子大神はスサノオであり阿弥陀如来。と神仏習合である。
ただ三神の関係性は時代とともに変遷があり面白い。
博物館の真横に和歌山県立近代美術館がある。
その前に黒川紀章の中銀カプセルタワービルの一室A908があった。白いミニチュアプードルのようにかわいい。
それは「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」により
23個が救出されたとある。「救出」!これまたかわいい。
10㎡に人間が生活する機能を詰め込む
2001年宇宙の旅(1968年)の映像が浮かんだ。白と青も綺麗。
垂れ幕にはこうあった。
51年目の旅、和歌山へ
中銀(なかぎん)カプセルタワービルは、1972年に竣工した建築家黒川紀章の代表作のひとつです。
新陳代謝する建築=メタボリズム運動の最若手の建築家として活躍した黒川の建築史に残る作品です。
約10㎡のスペースに人間が生活する最小限の機能を詰め込んだ「カプセル」140個から構成され、
カプセルを取り外して移動させたり交換したりすることで新陳代謝する建築物というユニークな思想が
体現されました。しかしカプセルは交換されることがないまま2022年、老朽化のため惜しまれつつも
解体。オーナーと住人を中心メンバーとする「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」により
23個が救出され、黒川紀章建設都市設計事務所監修のもと、保存・再生が行われました。
ここではそのうちのひとつA908(A棟908号室)を展示しています。
和歌山県立近代美術館・博物館は黒川紀章の設計により1994年に竣工した建物です。
黒川自身が設計した空間にその原点が詰まったカプセルがやってきました。